京都に住む

京都に限ったことではありませんが、全く見知らぬところに住むとなると、その地域社会に対する理解と寛容が必要であることは言うまでもありません。

しかし、京都はというと、そういったソフト面に加えて、建築物等のデザインに対して、更に厳しい行政による規制があります。

それは、京都市による景観政策によるもので、ほぼ京都市街地の全域にかかっています。

それは、以下の5つの政策と支援策からなります。

景観政策5つの柱と支援策
① 建物の高さ
② 建物等のデザイン
③ 眺望景観や借景
④ 屋外広告物
⑤ 歴史的な町並み
★ 支援制度

まずは、①建物の高さは、
都心部から三方の山すそに行くに従って次第に建物の高さが低くなることを基本構成とし、地域の特性に合わせて、10m〜31mの6段階の種別による高度地区により、高さを規定してします。

 
  <高度地区の高さの規制の例>

②建築等のデザイン
市街地のほぼ全域に,風致地区や景観地区,建造物修景地区等を指定し,それぞれの地域の特性に合わせたデザイン基準が定められています。


 
       山ろく型美観地区(鹿ケ谷)

 
       沿道型美観地区(御池通)

 
       旧市街地型美観地区(西陣)


 
      市街地型美観形成地区(小山)

 
      市街地型美観形成地区(壬生)
 
 
      市街地型美観形成地区(高野)

 
      沿道型美観形成地区(西大路通)

 
      沿道型美観形成地区(五条通り)

 
      沿道型美観形成地区(白川通)

③眺望景観や借景
京都市では、「眺望景観創生条例」を制定し,受け継がれてきた8つの眺めと38箇所の眺望景観・借景の保全、創出を図っています。

<区域の指定と概要>
・眺望空間保全区域
視点場から視対象への眺望を遮らないように建築物等が超えてはならない標高を定める区域
・近景デザイン保全区域
視点場から視認することができる建築物等が優れた眺望景観を阻害しないように外壁,屋根等の形態,意匠,色彩について基準を定める区域
・遠景デザイン保全区域
視点場から視認することができる建築物等が優れた眺望景観を阻害しないように外壁,屋根等の色彩について基準を定める区域

 

④ 屋外広告物

市内の全域で屋外広告物に対する基準が定められ、優良な屋外広告物には支援制度が設がえります。

<屋外広告物の基準>
・屋上看板や点滅式照明,可動式照明は市内全域で禁止
地区ごとの特性に応じて,屋外広告物の表示位置,面積,形態デザイン等に関する基準があります。

<優良な屋外広告物への支援>
優良な屋外広告物については,特例許可制度,施工費等の助成制度など,総合的な支援制度もあります。

⑤ 歴史的な町並み

伝統的な建築様式と生活文化を伝える京町家をまもるため、伝統的な建造物の外観の修理・修景などに対する助成を行い, 歴史的町並みの保全・再生が図られています。

★支援制度
景観政策の展開と併せて,京町家に対する支援策として,
①京町家耐震診断士派遣 制度,
②京町家耐震改修助成制度

適切に維持管理をするための支援策として,
①分譲マンション建て替え・大規模修繕アドバイザー派遣制度
②分譲マンション耐震診断 助成制度
③マンション建て替え融資制度
があります。

以上、日本全土に広がってほしいものもありますが、京都らしさを守り続けていくためにはかかせないものです。

よく理解の上、計画したいものです。

③-1. 岸辺型美観地区(一般地区)

良好な水辺の空間と調和した建築物が立ち並び,趣のある岸辺の景観を形成している地域を指定。

岸辺型美観地区には一般地区と歴史的街並み地区があり、一般地区での基本方針は下記のようになっています。

地区別方針

水辺を中心とする自然との共生の中で形成される緑豊かな潤いのある景観,河川沿いの緑地と山並み及びその前景をなす市街地とが一 体となった風情ある良好な景観の継承すること。

哲学の道 、岡崎疏水 、鴨川、高瀬川、濠川・宇治川エリアで指定されています。

< デザイン基準 >
◆ 落ち着きのある町並み景観を形成
◆ 河川側からの眺めにも配慮した形態意匠
◆ 河川に面する設備機器の修景
◆ 良好な河川景観を保全,創生
◆ 潤いと緑豊かな岸辺の景観の形成


(例)低層建築物の基準
屋根
・勾配屋根(原則として軒の出 60cm 以 上,けらばの出 30cm 以上)とする。
・原則として塔屋等を設けない。
・屋根材は,日本瓦,金属板又はこれらと同等の風情を有するもの
外壁
・圧迫感の低減及び水平方向を強調する形態意匠
・河川に面する3階以上の壁面後退(1階壁面より原則として 90cm 以上)
・自然景観と調和する色彩
その他
・道路に面する駐車場等の空地に対する門塀等による修景
(別途,植栽等の設置基準があります。)

④. 旧市街地型美観地区

歴史的市街地内において、生活の中から生み出された特徴ある形態意匠を有する建築物が存し、趣のある街並みの景観を形成している地域を指定している。

地区別方針
伝統文化や生活文化により培われた京町家を残す趣のある旧市街地にありながら,現代の都市活動が展開しており,京町家を中心とする和風を基調とした町並みを尊重しつつ,現代建築物が共存する景観を形成することを基本方針としています。

西陣、御所周辺 、鴨東 、鴨川、二条城周辺、職住共存地区、本願寺周辺 、伏見エリアで指定されています。

< デザイン基準 >

◆ 京町家等の歴史的建造物との調和
◆ 良好な屋上景観を形成
◆ 通り景観の連続性を維持

(例)低層建築物の基準
屋根
・特定勾配屋根(原則として軒の出60cm 以上)とする。
・原則として塔屋等を設けない。
・根材は,日本瓦,金属板又はその他の材料で当該地区の風情と調和したもの
軒庇
・道路に面する1、2階の外壁に軒庇を設置
(原則として特定勾配を持ち,軒の出 60cm 以上)
外壁
・ 歴史的町並み等と調和した形態意匠
・ 道路に面する3階以上の壁面後退(1 階壁面より原則として90cm以上)
・ 歴史的町並みと調和する色彩
その他
・道路に面する駐車場等の空地に対する門塀等による修景