集住の知恵

現在の日本のマンション、つまり集合住宅は、おおよそ同じような平面計画で 2LDK、3LDKといったような n + LDKや n + DK といったプランが主流です。

代表的な3LDKのマンションの間取り

 

まず、玄関から入ると、正面に中廊下があり、その奥にLDK(リビング・ダイニング・キッチン)があります。中廊下の脇の左右に、洋室2室とトイレ、洗面脱衣・浴室が配置され、ベランダ側に面したLDKの隣に和室が1室あるといったものです。

いろいろバリエーションはあるものの、おおよそこの定式になっています。

この定式化した3LDKの間取りは、巧妙に計算されたものでありますが、その利点と欠点を上げると以下のようになります。

(利点)
・個々の部屋のプライバシーの確保
・LDKという空間での家族交流の場「PP(公私室分離)」
・畳にじかに座る和室を組み合わせ視線を下げて空間の圧迫感の解消

(欠点)
・中廊下に面した部屋が子供部屋に使われることが多く、玄関から近く、親の目にふれずに部屋に直行できてしまう。
・廊下をはさんでトイレ、洗面所があり、これも親の目にふれずに移動できる。
・子供が部屋にこもってしまうと、お互いの気配が伝わりにく。
・子どもが幼い時は、個室とLDKが離れるので、子ども部屋として使いにくい。
・洗面脱衣・浴室が廊下の脇にあるので、風呂上がりの格好で、玄関で来訪者に遭遇する。
以上のように、
この定式化したnLDKのマンションプランは戦後にさまざまな観点から検討され、今につづいてますが、利点とは別に、欠点となる問題がかなり出てきています。

これらの欠点が、住人へのフラストレーションの蓄積にもなり、しいては子どもの人格形成に影響を与えるといっても過言ではありせん。

最近では、少しずつ変化の兆しがあり、画一的な間取りと嫌って、賃貸マンションでは、<デザイナーズ>と呼ばれるジャンルで、変わった間取りも出てきていますが、分譲マンションでなかなか進まないのが現状です。

その理由は、企画・設計する不動産会社が保守的になって、売れ残りを恐れたり、将来の売却を考慮して、無難で平均的な間取りに落ち着いてしまうからです。


とはいうものの、脱定型化の動きもあります。

●公団住宅の例
間取りを入居者が簡単に変えられるマンション
(東大阪市公営住宅)

 

水回りと一室のみを固定して、
後は可動収納家具と間仕切りパネルで
部屋を自由に仕切れる。

●公団住宅の例
フリー・スペース付きのマンション
(多摩ニュータウン)

 

フリー・スペース付きのマンションの間取りです。マンションの前面のスペースがフリー・スペースで、ここで商売を営んだり、趣味の場に活用できたりします。

●大阪ガスの実験住宅(NEXT21)
大阪ガスが、2階建てほどの人工地盤の上に、つくった実験住宅で、各階に数戸ずつあり、デザイナーが競って、新しい住み方を提案したものです。

(その一例)

 

個室が、A、B、C、Dと4室あり、それぞれに玄関がついています。
来訪者は、家というより、相手の個室を直接訪ねることができます。
玄関から入ると、ワンルームがあり、2つの個室で1つのトイレを共有するかたちで、トイレから双方の個室に抜けられる仕組みです。

その奥に広いリビングがあり、リビングには台所と浴室、共同の便所があり、便所の裏側にはは勝手口のような出入り口があります。

各個室のAとBは夫婦かもしれないし、親子か、兄弟か、単なる同居人かもしれません。
それぞれが自由で、各個室の奥にみんなが集まれるリビングルームがあります。

こうした考え方は、入口では私室を守って、その奥に共用部分、団らんの場所をつくるといった考え方です。

家族若しくはルームシェアをする人は個人の集まりである、という思想です。

間取りによって同居人との関係も変わってきます。

ネット社会になって、人との関係(実際のコンミュニケーション)が更に重要になってきている今日では、住居人の考え方にあった最適なプランを検討することが大切であると思います。

ある程度、経済ベースにのることも必要かもしれませんが、合理化の名の元にコピーペーストされた定式化のものではなく、それぞれの場所・地域・住居人にあった計画をする必要があると思います。