マンションのリノベーションをするに当たって、プラン検討や仕上材の選択、ユニットバス、全面化粧台、キッチンシンクやトイレといった設備機器の選択と同時に断熱性能等、性能面での検討も大切です。特に、築古の場合はなおさらです。
住宅の性能には、大きく分けて、10項目あります。
①耐震性能
②避難の安全
③ 劣化の軽減
④維持管理
⑤断熱性能
⑥空気環境
⑦ 光視環境
⑧ 音環境に関すること
⑨ 高齢者配慮
⑩防犯に関する事
これらの10項目は、品確法の住宅性能表示によるもので、詳しくはこちらに記載していますが、マンションのひとつの戸内のリノベーションに関しては、構造躯体や外部建具には手を加えることができないのですべてが当てはめることができませんが、検討すべきカテゴリーとしては有用であると思います。
①耐震性能
耐震性能は建物全体に関わるものなのでリノベーションのしようがありませんので、対象の物件を購入する際には気をつけたいものです。
1981年(昭和56年)6月1日以降の新耐震基準にて建築確認済証を取得しているものであれば安心です。
旧耐震基準は震度5強レベルで倒壊はしないですか、破損したとしても補修することにより生活することは可能です。
新耐震基準で設計されたものは、1995年の阪神淡路大震災で震度7レベルまで耐え得ることが証明されています。
②避難の安全に関して
マンションにはなんらかのタイプの火災警報機や消防設備が設置されていて共用部分に関しては、さわりようがありませんが、住戸内は対処することができます。
住戸内が小部屋に区画されていたり、迷路のようになっていると、万が一、他の住戸で火災が発生した場合、自分の住戸から脱出するのち時間がかかってしまいます。極端な例を上げると、避難上で最も有効であるのは、ワンルームとする事です。玄関扉やバルコニーへと直接避難することができます。
また、比較的新しいマンションの場合は、既存の住戸の居室毎に煙感知器等が設置されている場合があります。それらの感知器等は共同住宅用火災警報器に接続されているので、リノベーションのときは、再度、プランに合わせて設置し直す必要があります。照明器具や梁型からの離かく距離が決まっているので正しく計画しましょう。
③劣化の軽減に関しては構造躯体に関することなので、リノベーションしようがありません。
④維持管理について
共用配管については、手の施しようがありませんが、専用配管については、自分で掃除しやすように計画すればよいと思います。
主に、水漏れしやすい配管の接続部は点検口を設けるか、収納内におさめるか、或いはお思い切って露出配管としたデザインとするかです。
⑤断熱性能
築古のマンションの場合、断熱性能の確保が重要です。
従前のマンションの断熱方式にもよりますが、鉄筋コンクリートのマンションでは、一般的には内断熱工法で現場発泡の断熱材を吹いてる場合が多いです。外断熱で計画されているのは稀です。断熱性能とはこの断熱材の厚さ(一般的には外部に接する部分はぐるりと囲みます)と外部建具の構成と換気による熱損失によりトータルに計算します。
リノベーションのときは、内断熱の施工は可能なので、必要な断熱性能に対する、断熱材の種類とその厚さを確保して断熱性能を高めておく必要があります。
アルミサッシや玄関ドア等の部分は取替えができませんが、カーテンや障子、遮光フィルム等で対応できます。
換気に関しては、外壁に躯体貫通で開けられているスリーブは変更できませんが、内部の機器については変更可能なので、新しいプランにあった換気設備や空調設備を設置します。
⑥空気環境に関して
新鮮な空気は人間にとって大切なものです。近年の建築の考え方は、断熱性能を高め、気密性を高くするため室内空気がとどこおりがちなので、充分に換気できる設備で対応するというものです。
ただし、換気しすぎると断熱負荷になるので適切な換気量の換気設備をつける必要があります。
もちろん、アルミサッシの開口部を解放する事によって換気することができれば、それに勝るものはありません。
また、新建材には接着剤等でホルムアルデヒドといった人体に有害なものも含まれるので、自然建材を用いるほうがよいですが、新建材を使用せざるを得ない場合でも、ホルムアルデヒドの発散量の少ないものを採用し、施工直後から一定の期間は充分に努めて換気をする必要があります。
⑦光視環境
必要な光の度合いは人によって、年齢によって違いますが、基本的には日中は自然光で採光して足りない分を照明で補い、夜間は全般照明と局所照明によります。リノベーションの場合は、自然採光を取り入れる窓(開口部)が限定されているので、その窓をプランと上手く計画する必要があります。
また、窓は、さまざまなな機能があり、周囲の環境とも大きく関わりますが、光視環境に限っていうと、窓はその方位よって機能、役割をはたします。
北向の窓が有効な場合や、西向きや東向きの窓の特性や、南向きの窓の制御方法など・・・他の性能的要素とも多いに関係し、建築を計画する上で非常に重要なファクターなので、充分にかつ慎重にプランと調整する必要があります。
⑧音環境に関する事
集合住宅では、共同で生活するので、音の問題が発生することが多いです。自分の生活リズムやパターン、趣味などによるものが大きですが、リノベーションの場合も気をつけたいものです。
音の問題は、おおよそは床版(スラブ)や壁の厚さ、窓やドアの遮音性能で決まってきますが、仕上げ材や、部屋の配置計画でもある程度は解消できます。
⑨高齢者配慮に関すること
高齢者配慮に関することとは、品確法の住宅性能評価の評価項目として主に、段差、通路幅、内部の扉の幅、浴室や便所の大きさの規定されていますが、これらの評価項目を利用することによって、高齢者でなくも使いやすいものになるので、大いに計画に盛り込みたいものです。詳しくはこちら
⑩防犯に関する事
防犯に関する事は大きくは、建物全体に関わるものですが、住戸毎にも対応できるものもあります。玄関ドアの錠を防犯対策のもの、アルミサッシ等の外部建物に補助ロックを付ける等で対応しましょう。