ルイス・バラガンの家

ルイス・バラガン邸

メキシコシティのごく一般的な住宅地に、建築家や建築をまなぶ学生が世界中からおとずれる、聖地のような場所があります。建築家ルイス・バラガンの自邸です。

ピンク色の壁、浮いているような階段、空しか見えないテラス・・・

建築家が40年住みつづけ、手を入れつづけたその家は、バラガンが暮らしていたころのまま、まもられています。

メキシコがほこる世界遺産であり、テレビや雑誌でもよく紹介されているので、なんとなく、立派で、おしだしのつよい建物と思いがちですが、じっさいにたずねてみると、ひっそり、という言葉がふさわしい、静謐な家です。

バラガンは地方都市グアダラハラで生まれ、33歳のときメキシコシティに移り住みました。上京後 5~6年のあいだは、建売住宅の設計を数多く手がけています。彼自身は、そのころの仕事に満足していなかったようですが、いま見ても、簡素で、なかなかよいです。

バラガン邸の外観はそっけない。それと知らされなければ、たいていの人は、20世紀を代表する建築家の自邸と気づかないでしょう。メキシコシティの中心ソカロ広場から南西へ約7キロ、チャプルテペック広場のそばにあり、タクバヤという庶民的な地区の家並みにとけこんでいます。

外観でやや目立つのは、箱形の建物から突き出ている白い塔(なかに螺旋階段がある)と、道路側の壁にある、大きな磨りガラスの格子窓くらい。








入り口はガレージの右横にあり、それもまた、簡素きわまりのない鉄製のドアで、外壁のドア右側にかかれている「14」は、「フランシスコ・ラミレス将軍通り」の番地をしめしていて、格子窓の右にも同様のドアがあり(そちらは12)、事務所用の出入口。


バラガンはこういっている。「建築は内側から考えるべきです。」つまり、建物の外観は、考えぬかれた「内側」の結果にすぎない。ということでしょう。

玄関(Porteria)1階

扉上部のガラスが黄色に塗ってあるため、入り口扉を閉めると空間が黄に染まる。ベンチは黒柿、床にはメキシコシティ郊外の溶岩が用いられています。

ホール1階 

玄関に入り、ドアを閉めると、白い壁が黄に染まる。ドア上部の窓が黄色に塗られているため。玄関はせまく、ほそながい空間で、その奥のドアからバラガンはあらわれ、客をむかえた。背後に、こんどはピンク色の壁が見えます。

玄関をくぐりぬけてホールに立つと、空間の印象は一変する。天井は高く、吹き抜けもあり、どこからか自然光がふりそそいぐ。こうした仕掛け・・・暗く閉じられた場所から明るく開かれた場所へ、という手法を、バラガンはよくもちいたものです。

ホールは、バラガン邸の「ハブ」。玄関、リビング、食堂、台所、そして中2階や2階へゆき時も、いったんはここを通ることになリます。バラガン邸は迷路のようだとよくいわれますが、ホールをハブと考えれば、そうでもありません。また、何度通っても、この空間はいいものです。時間や天気によって光の見え方がかわり、空間のイメージが異なります。

リビングルーム(Estancia) 1階

ホールの階段の向かい側には、リビングへ通じるドア。自邸の家具はすべてバラガン自身のデザインだそうです。照明器具については、天井灯はひとつもないようです。

ドアを開けると、豚革製の衝立があり、リビングの全景は見渡せない。

リビングルームへはホールのドアから入りますが、扉を開けても、室内の様子はわからない。まず銀色のボールと木彫りの聖母子像が置かれた小空間があり、そこには屏風が立てられていて、視線がさえぎられる。ただし、高い天井と木の梁が見える。光の感じから、窓があるということもわかる。来訪者はなにかを予感し、期待をする。

そして、期待をうらぎらない。サッシを十字に組んだ大きな窓からの庭の眺め。バラガンは花よりも、葉の緑を愛した人だった。草木の緑はすべて違う色だ、ということを、くりかえし語っていた。

室内の床と、ペドレガル産の溶岩を敷いた庭の地面が同じ高さなので、室内と庭が、空間として連続する。また、天井の梁や、床の板張りが庭のほうへのびていることも、その印象をつよめている。窓は西向きである。

リビングルームの「十字窓」。手前の書見台の足も十字だ。窓は西向き。午後3時の陽光に木々の緑が美しい。

早朝6時ころのリビング

夜8時ごとのリビング

庭(Jardin)

リビングから庭へ出たところにある溶岩製の水鉢。

奥のくぐり戸はパティオヘ

バラガンは庭をつくることを、建物の設計とおなじか、ときにはそれ以上に大切なことと考えていた。庭はたたずみ、歩きまわるための場所であるだけでなく、眺める対象でもあった。この家では庭に面した窓の大きさ、高さなどが、各部屋ごとにことなっており、なのでそれを見れば、バラガンがその部屋で、庭の恵みをどのように享受しようとしていたのかがわかります。

いま、自邸の庭はかなり鬱蒼としているが、それは歿後にそうなっってしまったわけではない。竣工当時は木も少なく、広々とした芝生の庭だったが、しだいにバラガンは草木をふやし、剪定もあまりしなくなった。「庭づくりは想像力の仕事」というバラガンの言葉と符合するかもしれない。

リビングから庭へ出ると、溶岩の敷石のアプローチがあり、そこをすすむと、芝生のちいさな場所がある。鬱蒼とした庭のなかで、そこだけがひらけていて、明るく、空が見える。

書斎(Biblioteca)

当初はリビングと書斎をへだてる壁はなかったが、居心地がわるかったのか、すぐに、人の背丈より少し高い仕切り壁をもうけられた。それにより、バラガン邸の中心となるふたつのことなる性格の部屋を明確にゾーニングしつつも、一体とした空間となっている。

リビングが自然のうつろいにむきあう場所であるとすれば、外が見えない書斎は、みずからの内面に向きう場所だ。バラガンは、設計の実作業こそアトリエでおこなったが、そもそものアイデアを考えたり、本や画集をみたり、気心の知れた友人と語り合うのは、書斎のソファだった。

また、書斎には、有名な木の階段がある。中2階へ上るためのもので、段板が壁に深く差し込まれて、浮いているように見える。

ゲストルーム(Habitation de huespendes)

中2階へは、書斎の階段だけでなく、ホールの階段踊り場からもゆくことができる。黄金のゲーリッツの絵の横のドアを開けると、短い廊下があり、右に来客用の寝室、左に来客用のちいさなリビングがある。

リビングのドアの手前には、おそらくスペイン統治時代の、メキシカン・バロックの聖像が立っている。全身が金色で、しかも真上から黄色の光をあびているので、光っている。バラガンは熱心なカトリック信者で、自邸には多くの聖像が飾られている。

中2階の部屋、ゲスト用の小さなリビング、ゲスト用寝室の窓には、共に部屋カーテンはなく、4枚の板で光を調整する。その方法は、グアダラハラの伝統的な家屋にならったものだという。

部屋の配置図

 

1/玄関
  2/ガレージ
  3/ホール
  4/リビングルーム
  5/書斎
  6/ダイニングルーム
  7/朝食室
  8/台所
  9/アトリエ
10/オフィス
11/パティオ
12/ 庭
13/ゲストルーム
14/ラウンジ
15/寝室
16/衣装室
17/テラス
18/使用人部屋
19/洗濯室

住宅性能評価 劣化軽減 木造住宅 等級3

(3) 評価基準(新築住宅)

(1)木造住宅

木造住宅は軸組構法、枠組壁工法及びプレハブエ法など構法によって劣化の軽減のための措置が異なると考えられるが、劣化軽減のための対策には、共通して、外壁の通気構造・雨がかり防止措置、躯体を構成する木材あるいは木質製品の耐久性の区分、材料の小径、保存薬剤処理の有無、地盤の防蟻措置、浴室などの防水上有効な措置、基礎の高さ、床下の換気・防湿措置、小屋裏の換気が挙げられ、これらについては住宅の構法における差が認められないため、一括して扱うこととした。このように生物劣化を防止するためには各種の方法が挙げられるが、最も重要なことは、設計段階において構法的に劣化を軽減する措置を適用することである。その際に考慮されるべきことは、木材の使用環境を常に乾燥状態に保つことである。

1)等級3

告示3-1(3)イ①

イ.木造
 ①等級3
  以下の8種の項目について、
  それぞれ次に掲げる基準に適合していること。

  a .外壁の軸組等
  b.土台
  c.浴室及び脱衣室
  d.地盤
  e.基礎
  f.床下
  g.小屋裏
  h.構造部材等

a .外壁の軸組等

外壁の軸組、枠組その他これらに類する部分のうち地面からの砂さ 1m以内の部分が、次の(i)から(ⅲ)までのいずれかに適合していること。なお、北海道及び青森県の区域内に存する住宅にあっては防蟻処理を要しない。

※(木質の下地材を含み、室内測に館出した部分を合まない。 以下「軸組等」という。)

(i)通気層を設けた構造又は軒の出が90cm以上である真壁構造のいづれかの構造となっている外壁であり、かつ、軸組等が次の(イ)から(二)までのいずれかに適合するものであること。 [ 通気構造等 ]

※壁体内に通気経路を設けた構造で、外壁仕上げと軸組等の間に中空層が設けられている等軸組等が雨水に接触することを防止するための有効な措間が講じられているものをいう。

イ)軸組等に製材又は集成材等がもちいられ、かつ、外壁下地材に製材、集成材等又は構造用合板等が用いられているとともに、軸組等が、防腐及び防蟻に有効な薬剤が塗布され、加圧注入され、浸漬され、若しくは吹き付けられたもの又は防腐及び防蟻に有効な接着剤が混入されたものであること。

集成材等:
集成材の日本農林規格(昭和49年製林省告示第601号)に規定する化粧ばり構造用集成柱、構造用集成材の日本農林規格(平成 8年製林水産省告示第111号)に規定する構造用集成材、構造用単板積層材の日本農林規格(昭和 63年農林水産省告示第1443号)に規定する構造用単板積層材又は枠組壁工法構造用たて継ぎ材の日本農林規格(平成3年農林水産省 告示第701号)に規定する枠組み壁工法構造用たて継ぎ材をいう。以下同じ。)

構造用合板等:
合板の日本農林規格(平成15年股林水産省告示第233号)に規定する構造用合板、構造用バネルの日本農林規格(昭和 62 年製林水産省告示第360号)に規定する構造用パネル、日本工業規格A5908に規定するパーティクルボードのうちPタイプ又は日本工業規格A5905に規定する繊維板のうちミディアムデンシティファイバーボード(以下 「MDF」という。)のPタイプをいう。以下同じ。

口)軸組等に製材又は集成材等でその小径が13.5cm以上のものが用いられていること。

ハ)軸組等に構造用製材規格等に規定する耐久性区分D1の樹種に区分される製材又はこれにより構成される集成材等でその小径が12.0㎝以上のものが用いられていること。

構造用製材規格等:
針葉樹の構造用製材の日本農林規格(平成3年農林水産省告示第143号)、広葉樹製材の日本農林規格(平成8年農林水産省告示第1086号)及び枠組壁工法構造用製材の日本農林規格(昭和49年農林省告示第600号)をいう。以下同じ。

二) イ)から(ハ)までに掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措置が購じられていることが確かめられたものであること。

(ⅱ)構造用製材規格等に規定する保存処理の性能区分のうちK3以上の防腐処理及び防蟻処理が施されていること。

K3相当以上の防腐・防蟻処理:
日本工業規格K1570に規定する木材保存剤又はこれと同等の薬剤を用いたK3以上の薬剤の浸潤度及び吸収量を確保する工場処理その他これと同等の性能を有する処理を含む。

(ⅲ) (i)又は(ⅱ)に掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措置が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

木造住宅は、地面からの高さが1m以内の範囲にある軸組、枠組、木質パネルなどが劣化を受け易い。従って、 木造住宅の劣化対策は、この部分に講じられた措置を中心に評価することとなる。地面から高さ1m以内の外壁の軸組等には、柱、枠材、筋かい、耐力面材等が含まれる。通常、軸組という場合には、土台も含まれることがあるが、土台についてはbで別途規定している。

等級3における外壁の軸組等の基準の構成を簡単に示すと次のとおりとなる。

( i ) 通気構造等 + 次の(イ)から(二)までの措置のいずれか

イ)製材、集成材等又は構造用合板等を使用+薬剤処理(現場処理可)
ロ)製材、集成材等を使用+小径13.5cm以上
ハ)製材、集成材等を使用+耐久性区分D1の樹種+小径12.0cm以上
ニ)その他同等のもの

( ⅱ ) K3以上の薬剤処理(工場処理に限る。)

( iii ) その他同等のもの

これらのうち、その他同等のものとしては、第三者的な機関により、ここで挙げられている材料と同等以上の耐久性があると認められたものが含まれる。

なお、特に( i ).ニ)に当たるものとして、外壁の軸組等に、D1の樹種のうち、b土台の基準のただし書に規定されているヒノキ等の高耐久樹種による製材又は集成材等を用いることが挙げられる。また、含水率の低い木質材料を用いている場合には、初期の劣化対策として期待できるとの指摘があるが、これについては、当面の間は特別評価方法認定により対応することが想定される。

以下、特に解説を要する事項について述べる。

・通気構造等

外壁の構造については、真壁構造(図3-3参照)とそれ以外の構造とに分類して扱っている。真壁構造の場合には、構造材である木材が露出していることから、構造材が雨水で濡れ含水率が高くなったとしても、その後の乾燥が速い。しかし、真壁構造においては、軒の出がない又は短い場合には構造材が濡れる可能性が高いため、90cm以上の軒の出があることをもって効果を認めることとし、そこで、真壁構造の場合には、軒の出の基準と併せて規定することとした。


  
     図3-3 真壁構造

ぬす
    図3-4 通気層を設けた外壁

一方、真壁構造以外の外壁に関しては、外壁仕上げと軸組との間に中空層を設けるなど雨がかり防止上有効な措置が講じられ、かつ、壁体内に通気経路を設けた構造(図3-4参照)であることが基本となる。真壁構造以外の外壁構造は、基本的には大壁構造であるため構造材が壁体内にあり、壁体内に浸入した水分が壁体外に出にくい。この、壁体内に水分が浸入しないよう、外装仕上げ等の防水措置が重要であるとともに、壁体内に浸入した湿気(水蒸気等)を壁体外へ放出するための通 気措置を講ずる必要がある(図3-5参照)。このことにより、大壁構造の壁体は真壁構造とほぼ同等に水分や湿気を防ぐことが可能となる。





   図3-5 壁体外へ湿気を放出する措置

・外壁の下地材

外壁下地材に関しては、製材、集成材等及び構造用合板等の木質材料に限っており、生物劣化を受けにくい無機質系製品には、本基準は適用されない。 また、構造用合板等として用いることができる材料を限定しているが、これは主に接着耐久性の観点から、一定以上の水準を有するものである。構造用合板のほか、構造用パネル、Pタイプのパーティクルボー ド、Pタイプのミディアムデンシティファイバーボー ドが含まれる。

・薬剤処理

防腐・防蟻上有効な薬剤の塗布、加圧注入、浸漬若しくは吹き付け又は防腐・防蟻に有効な薬剤の接着剤への混入などの処理を施すことが求められている。ここでは、現場処理によることを認めているが、もちろん工場処理によるものも認められる。なお、接着剤に薬剤を混入する方法は、合板等に有効であるが、集成材の場合にはラミナが厚いため有効でない。

現場処理(塗布・吹き付け、浸漬)に有効な薬剤としては、日本工業規格K1570(木材防腐剤)に適合するクレオソート油の規格品、(株)日本しろあり対策協会または(株)日本木材保存協会認定の防腐・防蟻薬剤が挙げられる。加圧注入、接着剤混入による保存処理材としては、針葉樹構造用製材等の日本農林規格の規定に基づく保存処理材(K1を除く)、日本工業規格A9108、(財)日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証(AQ)により認証された製材、集成材、合板、LVL等の保存処理製品及び日本工業規格K1570に規定する薬剤を用いて同A9002の方法で製造された製材等が、防腐・防蟻上有効な性能を有している。

塗布、吹き付け、浸漬の場合には、できるだけ処理むらを生じないように処理を行い、木材等の木口、仕口、継手の接合部、亀裂部分、コンクリー ト及び石と接する部分等は入念に処理することが望ましい。

また、木材の耐久性はどの樹種にあっても、心材であることにより十分に発揮されるものであり、辺材が含まれる場合は、防腐・防蟻措置を講ずることが望ましい。

なお、シロアリ防除用に使用される有機リン系薬剤であるクロルピリホスについては、平成14年7月に建築基準法が改正され、クロルピリホスを添加した建築材料の使用が原則禁止となり、平成15年7月1日より施行されている。

さらに、公共住宅事業者等連絡協議会の公共住宅建設工事共通仕様書においては、薬剤による防蟻措置について、非有機リン系薬剤の使用に限ることを特記するよう改訂している。

防蟻剤の種別の詳細に関しては、基準に基づく評価の対象ではないが、木造住宅における薬剤による防蟻措置を行う場合には、こうした状況を十分に勘案の上実施されることが望ましい。

なお、評価方法基準には、日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)などを引用している部分があるが、引用元の規格で誤差を許容している場合は、本基準においても当該誤差は許容されると考えて差し支えない。

告示3-1(3)イ①
 b.土台

土台が次の( i )から( iii )までのいずれかに適合し、かつ、土台に接する外壁の下端に水切りが設けられていること。

( i ) 土台にK3相当以上の防腐・防蟻処理(北海道及び青森県の区域内に存する住宅にあっては、構造用製材規格等に規定する保存処理の性能区分のうちK2以上の防腐処理(日本工業規格K1570に規定する木材保存剤又はこれと同等の薬剤を用いたK2以上の薬剤の浸潤度及び吸収量を確保する工場処理その他これと同等の性能を有する処理を含む。))が施されていること。

(ⅱ) 構造用製材規格等に規定する耐久性区分D1の樹種のうち、ヒノキ、ヒバ、ベイヒ、ベイスギ、ケヤキ、クリ、ベイヒバ、タイワンヒノキ、ウェスタンレッドシダーその他これらと同等の耐久性を有するものに区分される製材又はこれらにより構成される集成材等が用いられていること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措個が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

土台は、他の構成部材と比較して柱の柱脚部と同様に劣化による被害が多い部分であり、被害を誘発する原因としては、雨水の浸入・はね返り、土中からの湿気、シロアリの侵入等がある(図3-6参照)。このため、土台については手厚い劣化対策が必要となるが、この基準では、c 以降の基準で、基礎高さ400mm以上、床下の防蟻・防湿措置を講じることを求めていることを前提として、外壁の下端に水切りを設けた上で、保存処理区分がK3相当以上の防腐・防蟻処理(北海道、青森県 にあってはK2相当以上の防腐処理)を施すか、又は、ヒノキ等の高耐久樹種を用いるかの対策を講じることを求めている(図3-7)。これにより、被害を誘発する原因を構法的に軽減するとともに、材自体の耐久性を高めている。なお、ここに定めた以上の劣化対策として、保存処理の性能区分がK4相当の防腐・防蟻処理を施すこと、また、犬走り等を設けて雨水のはね返りを軽減することなどが有効であり、腐朽や蟻害の激しい条件においては、必要に応じてこれらの措置を講じることが望ましい。


   図3-6 土台の劣化を誘発する要因


       図3-7 土台の劣化対策

土台の薬剤処理においては、構造用製材等の日本製林規格に規定する保存処理の性能区分のうちK3以上の防腐・防蟻処理のほか、一定の薬剤の浸潤度・吸収量を確保できる工場における加圧注入処理、あるいはこれと同等以上の処理方法とすることを求めている。なお、これには日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証(AQ)の保存処理2種以上の処理などがある。このような防腐・防蟻処理を行った場合は、使用される木材が集成材等であっても構わない。

ヒノキ等の高耐久樹種とは、日本農林規格に規定する耐久性区分D1に区分される樹種の中で、ヒノキ、ヒバ、ベィヒ、ベイスギ、ケヤキ、クリ、ベィヒバ、タイワンヒノキ、ウェスタンレッドシーダーその他これと同等の耐久性を有するものである。その他同等の耐久性を有するものとしては、木材工業ハンドブックに記載されている表中、 次に示す耐久性の区分がl又はII のものが挙げられ る。これらには住宅 の構造材として使われる見込みの少ない広葉樹材が多く、実際には以下のものの使用が想定される。

サワラ、ネズコ、イチイ、カヤ、コウヤマキ、インセンスシーダー、センペルセコイヤ

なお、これらの樹種により構成されるものである場合は、使用される木材が集成材等であっても構わない。

また、防腐 ・ 防蟻処理や高耐久樹種の使用の他に、これらの措置と同等の有効性を持つことが第三者的機関等により確かめられたものについても同様に扱われる。

木材の耐久性はどの樹種にあっても、心材であることにより十分に発揮されるものであり、辺材が含まれる場合は、防腐 ・ 防蟻措置を講ずることが望ましい。

告示3-1(3)イ①
 
 c 浴至及び脱衣室

浴室及び脱衣室の壁の軸組等(室内側に露出した部分を含む。)及び床組 (1階の浴室廻りで布基礎の上にコンクリートブロックを積み上げて腰壁とした部分又はコンクリート造の腰高布基礎とした部分を除き、浴室又は脱衣室が地上2階以上の階にある場合にあっては下地材を含む。)並びに浴室の天井が、次の( i )から(iii)までのいずれか又は aの( i )から(iii)までのいずれかに適合していること。

( i ) 防水上有効な仕上げが施されているものであること。

(ⅱ) 浴室にあっては、 日本工業規格A4416に規定する浴室ユニットとするものであること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の防水上有効な措置が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

台所、洗面所、浴室など使用水に関連する水廻りにおいて劣化割合が多いことが従来から指摘されているが、ここでは、台所、洗面所等については、水のはね返り防止や防水への配慮等がなされたシステムキッチンや洗面化粧台等を使用することが一般化してきていることを踏まえ、浴室及び脱衣室など、湿気や水濡れが著しい場所を特に取り上げて、床組等の防水措置又は防腐措置を求めている。具体的な対策としては、防水上有効な仕上げを施すこと、浴室にユニットバスを設置するなど防水上有効な仕上げを施すか、あるいは、外壁の軸組等に対して求められている防腐措置を講じることが挙げられる。

防水上有効な仕上げとは、シージング石こうボード貼り、ビニルクロス貼り等が挙げられるほか、耐水合板を使用する場合も同等の防水上の有効性があるものと考えられる。

なお、1階の浴室廻りについては、腰高布基礎(コンクリート造、 コンクリートブロック造 )などを採用した部分は、措置を講じる必要はない。

告示3-1(3)イ①
d 地盤

基礎の内周部及びつか石の周囲の地盤は、次の( i ) がら(iii) までのいずれか(基礎断熱工法を用いる場合にあっては( i ) )に適合する有効な防蟻措置が講じられていること。ただし、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福品県、新潟県、冨山県、石川県又は福井県の区域内に存する住宅にあっては、この限りでない。

( i )地盤を鉄筋コンクリート造のべた基礎で又は布基礎と鉄筋により一体となって基礎の内周部の地盤上に一様に打設されたコンクリートで覆ったものであること。

(ⅱ)有効な土壌処理が施されたものであること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の防蟻性能があると確かめられたものであること。

【解説】

シロアリは、地中から基礎、床束その他の地面と建物をつなぐものを伝わって建物内に侵入する。これを防ぐために、べた基礎等で床下の地盤面を覆うこと、又は、防蟻薬剤により土壌処理を行うことが求められる。この場合の有効な防蟻薬剤には、(社) 日本しろあり対策協会又は(社) 日本木材保存協会認定の土壌処理用薬剤がある。

べた基礎と同等の防蟻効果を有するものとして、布基礎と防湿コンクリートを鉄筋で一体としたものがある。

鉄筋で一体化することを求めるのは、基礎の立ち上がり部分と防湿コンクリートとの間に隙問が生じ、そこからシロアリが侵人することを防止するためである。

なお、土壌処理を行う場合には、敷地の状況、土質などを判断して薬剤の種別や処理方法を決定し、水質汚染等につながらないように慎重に行う必要がある。

また、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県及び福井県の区域内では、比較的寒冷地であるため、ヤマトシロアリによる被害の進行が遅いので、この基準を適用することとしていないが、北海道の一部を除きヤマトシロアリは生息しているので、必要に応じて防蟻措置を講ずることが望ましい。

告示3-1(3)イ①
 e 基礎

地面から基礎上端までの高さが400mm以上であること。

【解説】
基礎高さは、土台等の木部の劣化を防止するために必要であり、地盤面から基礎上端までの高さは、
①雨のはね返りを防止するのに必要な高さ
②換気口の下端の地盤面からの高さ
③点検のしやすさ
などを考慮する必要がある。これらの諸条件を考慮して、400mm以上としている。

告示3-1(3)イ①
 f 床下

床下が次に掲げる基準に適合していること。

( i )厚さ60mm以上のコンクリート、厚さ0.1mm以上の防湿フィルムその他同等の防湿性能があると確かめられた材料で覆われていること。

(ⅱ)外壁の床下部分には、壁の長さ4m以下ごとに布効面積300㎝2以上の換気口が設けられ、壁の全周にわたって壁の長さ1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口が設けられ、又は同等の換気性能があると確かめられた措置が講じられていること。ただし、基礎断熱工法を用いた場合で、床下が厚さ100mm以上のコンクリート、厚さ0.1mm以上の防湿フィルム(重ね幅を300mm以上とし、厚さ50mm以上のコンクリート又は乾燥した砂で押さえたものに限る。)その他同等の防湿性能があると確かめられた材料で覆われ、かつ、基礎に用いられる断熱材の熱抵抗が、次の表の地域区分(5-1(2)イ①に規定する地域区分をいう。)に応じ、それぞれに掲げる数値以上であるときは、この限りでない。

[解説]

床下は、地面からの水蒸気等により湿気がたまりやすい場所である。このため基準では、木材腐朽菌やヤマトシロアリなどが乾媒に弱いことを考慮して、床下の防湿措置及び換気措置を講じることを求めている。

床下の防湿措置としては、厚さ60mm以上の防湿コンクリート又は厚さ0.1mm以上の防湿フィルム等を用いることがある(図3-8、3-9参照)。透湿抵抗のある防湿フィルムとしては、JISA6930住宅用プラスチック系防湿フィルム、JIS Z1702 包装用ポリエチレンフィルム、JIS K6781 農業用ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。この場合、基準に基づく評価の対象ではないが、一般的に次の点に留意することが有効である。

① 地面に散乱した木片などを除去し、地面を十分締め固め、平滑にする。

②配管工事、木工事の際に敷き詰めた砂を乱さないようにするとともに、防湿フィルムを破らないようにする。また、工事後、撒いた砂に木くず等が混入しないようにする。

③雨水等により地面や敷き詰めた砂が濡れた場合には、十分に乾燥させる。

④床組最下面と敷き詰めた砂との間隔は、300mm以上空間を保つようにする。

⑤防湿コンクリートを使用する場合には、施工直後はコンクリートに含まれた水分が蒸発するため床下空間の湿度が高くなるので、 コンクリートが十分乾燥してから床仕上げを行う。


    図3-8 床下地盤面の防湿措置


    図3-9 防湿コンクリート

また、換気措置としては、 4m以下毎に有効面積300㎝2以上の換気口が設けられていること、 又は、壁の全周にわたって壁の長さ1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口(ねこ土台) が設けられていること等がある。 この場合、 基準に基づく評価の対象ではないが、 一般的に次の点に留意することが有効である。

①柱の配置等にも注意した上で4mの等間隔に、有効な床下換気が行えるようにバランス良く換気口を配懺する。

②床下のコーナ一部は換気不足になりがちなため、近くに換気口を設ける(図3-10参照)。

③床下が常に乾燥している状態を保つために、換気口はできるだけ高い位置に設ける(図3-11参照)。

④外周部の換気口から雨水が浸入しないように、換気口下端は外下がりに勾配をつける(図3-12参照)。

⑤間仕切り壁の下部が布基礎の場合には、通風・点検のために換気口を設ける(図3-13参照)。

⑥ねこ土台によって1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口を設け床下換気を確保する場合には、構造上支障がないように間隔、位置等を十分検討する。


 図3-10 床下換気口の配置


  図3-11 床下換気口の位置


    図3-12 床下換気口断面


  図3-13 間仕切り壁下部の換気口

なお、 基礎断熱工事(床に断熱材を施工せず、布基礎の内外に地面に垂直に断熱材を施工し、 床下換気口を設けない工法。 図3-14参照) を採用する場合には、 換気措置を求めないことから、 地域区分に応じて所定の断熱材を施工すること、床下の水蒸気の滞留を防止するために入念な防湿措置を講じることを求めている。 この場合、 基準に碁づく評価の対象ではないが、 次の点に留意することが有効である。

①埋設する断熱材はシロアリの被害を受けやすいため (外側の断熱材が蟻道となるおそれがある。)、断熱材の施工位置を内側とするなどの対策が必要である。 また、 断熱材の継目に隙間があると、 そこが熱的な弱点となるため、 断熱材同士の隙間には現場発泡のウレタン材などを充填する。

②床下の空気は、室内の空気と交換されるおそれがあるため、べた基礎まで地盤を覆う等により床下空気中に防腐・防蟻薬剤が飛散しないような工夫が必要である。また、居室が高湿度になっている場合には、 床下空間も同様となるため、 居住空間の温湿度管理を行う必要がある。

③床下点検口等を設懺して、 床下の状態を点検しやすくする。

④給排水管からの漏水や雨仕舞い不良によって水分が床下に浸入した場合には、速やかに対応策を講ずる。


 
      図3-14 基礎断熱工法

告示3-1(3)イ①
g 小屋裏

小屋裏(屋根断熱工法を用いていることその他の措置が講じられていることにより、室内と同等の温熱環境にあると認められる小屋裏を除く。)を有する場合にあっては、次の( i )から(ⅳ)までのいずれかの換気方式であること。

( i )小屋裏の壁のうち屋外に面するものに換気上有効な位置に2以上の換気口が設けられ、かつ、換気口の有効面積の天井面積に対する割合が300分の1以上であること。

(ⅱ)軒裏に換気上有効な位置に2以上の換気口が設けられ、かつ、換気口の有効面積の天井面積に対する割合が250分の1以上であること。

(ⅲ)軒裏に給気口が設けられ、小屋裏の壁で屋外に面するものに排気口が給気口と垂直距離で90㎝以上離して設けられ、かつ、給気口及び排気口の有効面積の天井面積に対する割合がそれぞれ900分の1以上であること。

(ⅳ)軒裏に給気口が設けられ、小屋裏の頂部に排気塔その他の器具を用いて排気口が設けられ、かつ、給気口の有効面積の天井面積に対する割合が900分の1以上であり、排気口の有効面積の天井面積に対する割合が1600分の1以上であること。

【解説】

木造住宅においては、地面から1m以内にある構造部材が劣化を受ける場合が多いが、この他に劣化が発生しやすい場所として、水廻り及び小屋組があり、ここでは、小屋組部材の劣化を軽減する措置を定めている。

小屋組での劣化は、雨淵り及び結露水が主な原因として考えられる。このため、床下と同様に小屋裏空間に逃げた湿気を小屋裏換気口を通して屋外に放出することが必要である(図3-15参照)。換気口は、湿気を屋外に排出する以外に次のような利点を有する。

①小屋裏内の温度が外気温に近づくので、屋根下地板表面での結鋸を防止する。
②瓦下での結露を防止する。


   図3-15 小屋裏換気口の種類

告示3-1(3)イ①
h 構造部材等

令第37条、第41条、第49条及び第80条の2(国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分で、構造躯体等の劣化軽減に関係するものに限る。)の規定に適合していること。

【解説】

建築基準法施行令第36条に規定されている耐久性等関係規定のうち、劣化の軽減に関する規定への適合を求めているものである。

省エネ住宅の新築に対する主な支援措置 (令和二年度予算等)

新築住宅を対象とする支援事業の紹介

【 補助金対象 】

地域型住宅グリーン化事業(高度省エネ型)

(支援対象)
地域の中小工務店のグループの下で行われる省エネ性能に優れた木造住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
補助率:「掛かりまし費用」の1/2
限度額:ZEH 140万円/戸、低炭素認定住宅 110万円/戸

サステナブル建築物等先導事業(省エCO2先導型)

(支援対象)
先頭性の高い省エネ化に取り組む住宅(主にLCCM住宅)の新築等

(主な補助率・補助額等)
補助率:「掛かりまし費用」の1/2
限度額:125万円/戸

【 融資 】

フラット35S

(支援対象)
省エネ性能に優れた住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
適用金利▲0.25%/年、当初5年間
省エネ基準▲10%相当の場合は10年間

【 税 】

住宅ローン減税(所得税)

(支援対象)
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
一般住宅に比べ、
最大控除額を100万円加算【税額控除】
(消費税率10%が適用される住宅の新築をした場合、
最大控除額を120万円加算【税額控除】)

投資型減税(所得税)

(支援対象)
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
控除率:
標準的な性能強化費用相当額の10%
最大控除額:
65万円【税額控除】

固定資産税、登録免許税、不動産取得税の優遇措置

(支援対象)
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
固定資産税:
一般住宅に比べ、軽減期間を2年延長(※)

登録免許税:
一般住宅に比べ、税率を0.05%−0.2%減免

不動産取得税:
一般住宅に比べ、課税標準からの控除額を100万円増額(※)
※の特例については認定長期優良住宅のみ

贈与税非課税措置

(支援対象)
住宅取得費用の贈与を受けて行う省エネ性能(省エネ基準相当)
に優れた住宅の新築

(主な補助率・補助額等)
一般住宅に比べ、非課税限度額を500万円加算

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省エネ住宅に関するお問い合わせ窓口



自立循環型住宅

住人十色

mbsの番組で、松尾貴史氏と三船美佳さんによる住人十色という番組がありますが、住宅というのは本当に住む人それぞれによって、それぞれにあった形があると思います。

家族構成、年齢構成、仕事場との関わりや地域との関わりはもとより、身体的な関わりもあります。

例えば、人によっては「階段は登りは左回りでないと気持ちが悪い。」といったことや壁の色は一般的には無難な白系やベージュ系ですが、ダークな色でないと落ち着かないといったことや、空間の広さ、天井の高さが人に与える心地良さの影響も多いにあります。

建売住宅やマンションでは規格された形状によるものが多いので、無理やりにその規格に合わせた生活をする必要があり、知らず知らずのうちに小さなストレスが溜まっていくことになります。

現代社会では多少のストレスは仕方がないものとしていますが、ストレスはできるだけ溜めないためにも、自分にあった住宅を計画したいものです。

K邸 つどえる 屋上ルーフテラス

  

地階はボックスカルバートの駐車場の上に地上2階建ての計画です。
ロフトを加えると実質、4層の木造戸建て住宅

屋上ルーフテラスのコーナー開口部からは、毎年行われるその土地の風物詩を眺めることができます。


  
1階に可動間仕切りでれレイアウト変更可能な子供部屋、主寝室及び和室のゲストルームを設け、2階にスキップフロアで区切ったリビングルームとダイニングを配置。

  

各階共、南北の卓越風を取り入れ、自然の風により換気を行うことができます。

  




在来木造 延べ面積 112.34平米(33.98坪)
地下1階、地上2階、屋上ルーフテラス

自分の家を建てるなら設計事務所がいい☆

家を建てようと思うと、依頼先はハウスメーカーか工務店と考えてはいませんか?
しかし、自分の家を建てるのであれば、設計は設計事務所をだんぜんおすすめします。

将来売却予定やその際の資産価値の目減りを防ぐための家であれば、あらかじめある程度、形や仕様の決まっているハウスメーカーや工務店が良いかもしれませんが、自分の住む家を建てるのであれば、設計事務所です。

ここでは設計事務所の特徴や依頼するメリットなどについて解説します。

設計事務所ってどんな特徴がある?ハウスメーカーや工務店との違い

設計事務所とハウスメーカーや工務店との大きな違いは、どんな基準で設計をするかという点です。

私は、設計の専門性は設計事務所にあり、施工の専門性は工務店にあると考えます。

ハウスメーカーの場合は、
所属の建築士や設計士が設計した図面をもとに、下請けの工務店に施工を依頼します。
ハウスメーカーは大企業という会社の性質上、業務の合理性が求められるので、選択肢を大幅に絞り込み、いくつかのパターンを決めています。その中から依頼者の希望に近いものを選びぶことになります。
そのパターンから外れる場合は不可能ですが、請け負ってもらえても大幅に金額増になります。

工務店に直接依頼する場合は、
その工務店の建てる建物がその工務店の得意としている構造や形態であれば、工務店に所属する建築士が設計した図面に合わせて施工を行い問題なく施工されます。ただし、施工者の立場で設計を行うので、その工務店の技術力により設計の自由度は下がります。

設計事務所に依頼した場合は、
依頼者の希望を聞いたうえで、依頼者の希望にできるだけ合うように設計を行い、それを形にできる工務店を選定して施工を依頼します。
ハウスメーカーや工務店では、木造の場合は3階建てでなければ、構造計算は行わないませんが、設計事務所の場合は、必要であれば、構造計算も視野に入れて設計を行います。

設計事務所に設計依頼をするメリット、デメリット

設計事務所に設計を依頼すると、自分の生活パターンに合った形を実現でき、心地よさを最適化でき、デザイン性の優れた家もにできるという点がいちばんのメリットです。

  

法令と予算の範囲内であれば、どんな工法を取り入れることも可能です。土地の広さや形にも合わせた家にすることもできます。

また、設計事務所の設計士が、施工に際して設計図面通り建てられているかどうかをチェックする「工事監理」を行うので、手抜き工事をされにくく、欠陥住宅になりにくいというメリットもあります。

通常、設計事務所とは「設計業務」と「工事監理業務」の請負契約を結びます。
その時の建築工事は、工務店と「工事請負契約」を結びます。

設計事務所へのデメリットといえば、
営業に特化した人材を置いていない場合が多いので、
ローンを組む際には、自分で段取りをして、手続きを取らなければならないケースがあることです。

とはいえ、満足度の高さならやはり設計事務所のほうがおすすめです。

依頼者が考える設計事務所の魅力!最大のメリットは何?

一般的に言われている、設計事務所依頼へのメリット

希望に沿ったオリジナルの家になるのが最大の魅力
・設計士と直接話し合い、希望を聞いてもらえるところ。
 (営業の人間が間に入らない)
・設計者に自分の理想とする住宅イメージを伝えることが出来る。
・自分の要望を可能な限りかなえてくれるところ。
・自分のライフスタイルにあった設計をしてもらえる。
・常識にとらわれないデザインを期待できる。
・様々な注文を聞いてくれるので、オンリーワンな住宅設計ができる。

 

わざわざ注文住宅の形で家を建てるわけですから、皆さんそれなりのこだわりや希望があるはずです。その希望を聞き取って、設計に活かしてくれるのが設計事務所であると感じている人が多いようです。

では、最後にどんな条件で設計事務所を選んだらよいかを考えてみましょう。

依頼する際に忘れてはならない条件は?

最初に自分が家に盛り込みたい条件をすべて書き出すところから始めます。
実現可能かどうかにとらわれず、どんな家にしたいのかという理想をすべて書き出すようにします。

次に、その理想を叶えられそうな会社を複数ピックアップします。

メーカー、工務店、設計事務所と幅広く対象にして、その中から選ぶようにすると妥協する部分が少なくて済みます。

住宅会社によって、それぞれ得意とする工法や構造が異なり、かかる費用にも差があります。

とりあえずは予算を考えずに、自分の希望通りの家になりそうな会社を選んでみましょう。

いくつかに絞ったら、その時点で相見積もりを依頼します。

注文住宅ですから、最も自分の希望が通りやすいところを選ぶと後悔せずに済みます。

もちろん、予算とかけ離れていると実現が難しくなります。希望通りの家からどの部分を削っていくかを相談し、できるだけ希望に沿った形で決着するように持って行くと満足感の高い家になるでしょう。

 
そういった点からも、注文住宅を建てる際には設計事務所を選ぶとメリットが大きいと言えます。

■ まとめ

設計事務所に注文住宅の建築を依頼することの魅力は、自分の理想を現実の形にしやすいという点に尽きるでしょう。

設計事務所では依頼者の希望に基づいた設計をするため、

依頼者と設計士がきちんとイメージを共有できれば、理想に近い家に仕上がります。

また、図面に基づいて施工を行うのは工務店ですが、工務店の作業に対する監理は設計事務所が行います。

作業者による手抜き工事を防ぐことにも繋がるため、欠陥住宅になるのを防げる点も魅力的です。

集住の知恵

現在の日本のマンション、つまり集合住宅は、おおよそ同じような平面計画で 2LDK、3LDKといったような n + LDKや n + DK といったプランが主流です。

代表的な3LDKのマンションの間取り

 

まず、玄関から入ると、正面に中廊下があり、その奥にLDK(リビング・ダイニング・キッチン)があります。中廊下の脇の左右に、洋室2室とトイレ、洗面脱衣・浴室が配置され、ベランダ側に面したLDKの隣に和室が1室あるといったものです。

いろいろバリエーションはあるものの、おおよそこの定式になっています。

この定式化した3LDKの間取りは、巧妙に計算されたものでありますが、その利点と欠点を上げると以下のようになります。

(利点)
・個々の部屋のプライバシーの確保
・LDKという空間での家族交流の場「PP(公私室分離)」
・畳にじかに座る和室を組み合わせ視線を下げて空間の圧迫感の解消

(欠点)
・中廊下に面した部屋が子供部屋に使われることが多く、玄関から近く、親の目にふれずに部屋に直行できてしまう。
・廊下をはさんでトイレ、洗面所があり、これも親の目にふれずに移動できる。
・子供が部屋にこもってしまうと、お互いの気配が伝わりにく。
・子どもが幼い時は、個室とLDKが離れるので、子ども部屋として使いにくい。
・洗面脱衣・浴室が廊下の脇にあるので、風呂上がりの格好で、玄関で来訪者に遭遇する。
以上のように、
この定式化したnLDKのマンションプランは戦後にさまざまな観点から検討され、今につづいてますが、利点とは別に、欠点となる問題がかなり出てきています。

これらの欠点が、住人へのフラストレーションの蓄積にもなり、しいては子どもの人格形成に影響を与えるといっても過言ではありせん。

最近では、少しずつ変化の兆しがあり、画一的な間取りと嫌って、賃貸マンションでは、<デザイナーズ>と呼ばれるジャンルで、変わった間取りも出てきていますが、分譲マンションでなかなか進まないのが現状です。

その理由は、企画・設計する不動産会社が保守的になって、売れ残りを恐れたり、将来の売却を考慮して、無難で平均的な間取りに落ち着いてしまうからです。


とはいうものの、脱定型化の動きもあります。

●公団住宅の例
間取りを入居者が簡単に変えられるマンション
(東大阪市公営住宅)

 

水回りと一室のみを固定して、
後は可動収納家具と間仕切りパネルで
部屋を自由に仕切れる。

●公団住宅の例
フリー・スペース付きのマンション
(多摩ニュータウン)

 

フリー・スペース付きのマンションの間取りです。マンションの前面のスペースがフリー・スペースで、ここで商売を営んだり、趣味の場に活用できたりします。

●大阪ガスの実験住宅(NEXT21)
大阪ガスが、2階建てほどの人工地盤の上に、つくった実験住宅で、各階に数戸ずつあり、デザイナーが競って、新しい住み方を提案したものです。

(その一例)

 

個室が、A、B、C、Dと4室あり、それぞれに玄関がついています。
来訪者は、家というより、相手の個室を直接訪ねることができます。
玄関から入ると、ワンルームがあり、2つの個室で1つのトイレを共有するかたちで、トイレから双方の個室に抜けられる仕組みです。

その奥に広いリビングがあり、リビングには台所と浴室、共同の便所があり、便所の裏側にはは勝手口のような出入り口があります。

各個室のAとBは夫婦かもしれないし、親子か、兄弟か、単なる同居人かもしれません。
それぞれが自由で、各個室の奥にみんなが集まれるリビングルームがあります。

こうした考え方は、入口では私室を守って、その奥に共用部分、団らんの場所をつくるといった考え方です。

家族若しくはルームシェアをする人は個人の集まりである、という思想です。

間取りによって同居人との関係も変わってきます。

ネット社会になって、人との関係(実際のコンミュニケーション)が更に重要になってきている今日では、住居人の考え方にあった最適なプランを検討することが大切であると思います。

ある程度、経済ベースにのることも必要かもしれませんが、合理化の名の元にコピーペーストされた定式化のものではなく、それぞれの場所・地域・住居人にあった計画をする必要があると思います。

家の中の段差の解消

楽で安全度の高い生活をするためには、段差のない同一平面の住宅から始まります。1階から2階へと結ぶ階段はやむを得ませんが、それ以外の段差は設計段階から配慮することにより、ほとんど解消することができます。

年齢を重ねると、自分の意識どおりに脚が上がってはおらず、少しの段差や凹凸でもつまづきやすく、その際の転倒により骨折してしまい、動けないのでますます動けなくなり、寝たきりになってしまうケースが多いです。

空間的なおもしろさや変化をねらった、部屋の中や部屋と部屋との間の段差をつけた住宅は、おもしろくもありますが、若いあいだからそういった住宅に住んでいれば身体がそれに適用していきますが、年齢を経てからの改修や新築の場合は、できるだけ凹凸のない、つまづきにくい計画をするほうがよいです。

一般に日本の住宅に見られる段差は、さまざまな理由により、以下の箇所にみられます。

①玄関・勝手口
上り框を低くしたり、式台を設けたり、手すりを設ける。

②浴室
出入口に排水溝をとり、脱衣室へ水が流れないようにして、浴室床面と脱衣室床面を同じレベルにする。

③便所
便所内の床仕上げはできるだけ、廊下側の床仕上げと同じにして段差を解消する。

④和室
畳厚さとフローリング厚さとの差のは下地で解消して、同じレベルとするか、腰を掛けて和室に入れるように300〜400mm程度まで和室レベルを上げる。和室に座ったときの目線レベルとフローリング部分のテーブル椅子に座ったときの目線レベルを合わせる。

 
藤井厚二氏による実験住宅
聴竹居(和室と居間のつながり)

⑤その他、建具の敷居・靴ずりを介して床仕上げが異なる場合は下地レベルにより調整を行う。

 

★建物の力

「間取り」は、そこで暮らす人たちの生活の設計図そのものです。家族構成や日々の生活のありかたの、かなりの部分が「間取り」によって左右されてしまいます。

かつての日本では、家族団らんの場は「茶の間」であった。そこで〈ちゃぶ台〉を囲み、食事をしながら談笑している。そんな夕餉のシーンが家族の幸せを象徴してました。

生活の洋風化とともに、ちゃぶ台はダイニングテーブルに代わり、「男子厨房に入らず」であった台所は、女性の社会進出もあって、共同で作業のできる「より明るく開放的な」オープンキッチンへと変わってきています。

当然、そんな間取りの変化にともなって、家族団らんの光景は大きく様変わりしていることはいうまでもありません。
また逆に、間取りは人格形成にとって、影響を与えると言っても過言ではありません。
現在、将来の生活を見据えて、家族の幸せのあり方を徹底的に考えて計画する必要があります。

既存、あるいは決められた間取りでは、充分に納得がいくものは得られないものです。

尚、空間の豊かさは平面図だけでは、あらわせず、断面の検討、3Dや模型による検討も重要なものです。

あらゆる角度から検討した我が家は、住み主にとってこの上ないものとなるものと考えます。

出入口の工夫

-- 建具の方式 --

足腰が弱ってくるときは急激に進んでくるものです。将来のそうした不安にそなえて、部屋の出入口は車椅子が使えるように配慮しておきたいものです。

出入り口への配慮のポイントとしては、段差、入口幅、開きぐあい、建具の方式があげられます。ここでは、建具の方式を中心に紹介します。

●引き戸
杖を使って歩行する人や車椅子使用の人にとっては、引き戸が最も使いやすい建具だといえます。プライバシーや気密性には欠けますが、操作がしやすく、身体をよける空間が不要なので、狭い空間に適しています。引き戸にもいろいろなタイプがあります。

①3枚引き戸
二枚引き戸では、車椅子に必要な入口幅が取りにくい場合に、三枚に分割して必要幅を確保します。

②アコーディオンドア
現行二枚引き戸の出入口において、車椅子の有効幅を確保したい場合に、市販のアコーディオンドアなどを利用してリフォームします。
開き戸の出入口に対するリフォームの場合は、たたみ代(しろ)でさらに有効幅が狭くなるので利用できません。

③一枚引き戸
ドア幅が広いので1回の操作ですみ、空間もすっきりします。この場合は、吊り戸式のものが、操作も軽く、足元に戸車のレールがないのでよいでしょう。

 

●開き戸
開き戸は、車椅子の場合には扱いにくいものです。開き加減によっては身体がじゃまになり、出入りがしにくくなります。また、車椅子で操作するためには、ドアの横に操作するための空間が必要になります。また、風のつよい日などは、中途半端な開き方でドアが閉まって、手をはさまれたりするケースがあるので、ドアチェックをつける必要があります。

 

●とっ手
車椅子の高さで力を入れて操作できる位置は、健常者の高さとは異なります。おおよそ、60〜70センチで計画します。つかみやすいタイプで、手ざわりのよい木製などのあたたかみのある材質がよいと思います。