住宅性能評価 劣化軽減 木造住宅 等級3

(3) 評価基準(新築住宅)

(1)木造住宅

木造住宅は軸組構法、枠組壁工法及びプレハブエ法など構法によって劣化の軽減のための措置が異なると考えられるが、劣化軽減のための対策には、共通して、外壁の通気構造・雨がかり防止措置、躯体を構成する木材あるいは木質製品の耐久性の区分、材料の小径、保存薬剤処理の有無、地盤の防蟻措置、浴室などの防水上有効な措置、基礎の高さ、床下の換気・防湿措置、小屋裏の換気が挙げられ、これらについては住宅の構法における差が認められないため、一括して扱うこととした。このように生物劣化を防止するためには各種の方法が挙げられるが、最も重要なことは、設計段階において構法的に劣化を軽減する措置を適用することである。その際に考慮されるべきことは、木材の使用環境を常に乾燥状態に保つことである。

1)等級3

告示3-1(3)イ①

イ.木造
 ①等級3
  以下の8種の項目について、
  それぞれ次に掲げる基準に適合していること。

  a .外壁の軸組等
  b.土台
  c.浴室及び脱衣室
  d.地盤
  e.基礎
  f.床下
  g.小屋裏
  h.構造部材等

a .外壁の軸組等

外壁の軸組、枠組その他これらに類する部分のうち地面からの砂さ 1m以内の部分が、次の(i)から(ⅲ)までのいずれかに適合していること。なお、北海道及び青森県の区域内に存する住宅にあっては防蟻処理を要しない。

※(木質の下地材を含み、室内測に館出した部分を合まない。 以下「軸組等」という。)

(i)通気層を設けた構造又は軒の出が90cm以上である真壁構造のいづれかの構造となっている外壁であり、かつ、軸組等が次の(イ)から(二)までのいずれかに適合するものであること。 [ 通気構造等 ]

※壁体内に通気経路を設けた構造で、外壁仕上げと軸組等の間に中空層が設けられている等軸組等が雨水に接触することを防止するための有効な措間が講じられているものをいう。

イ)軸組等に製材又は集成材等がもちいられ、かつ、外壁下地材に製材、集成材等又は構造用合板等が用いられているとともに、軸組等が、防腐及び防蟻に有効な薬剤が塗布され、加圧注入され、浸漬され、若しくは吹き付けられたもの又は防腐及び防蟻に有効な接着剤が混入されたものであること。

集成材等:
集成材の日本農林規格(昭和49年製林省告示第601号)に規定する化粧ばり構造用集成柱、構造用集成材の日本農林規格(平成 8年製林水産省告示第111号)に規定する構造用集成材、構造用単板積層材の日本農林規格(昭和 63年農林水産省告示第1443号)に規定する構造用単板積層材又は枠組壁工法構造用たて継ぎ材の日本農林規格(平成3年農林水産省 告示第701号)に規定する枠組み壁工法構造用たて継ぎ材をいう。以下同じ。)

構造用合板等:
合板の日本農林規格(平成15年股林水産省告示第233号)に規定する構造用合板、構造用バネルの日本農林規格(昭和 62 年製林水産省告示第360号)に規定する構造用パネル、日本工業規格A5908に規定するパーティクルボードのうちPタイプ又は日本工業規格A5905に規定する繊維板のうちミディアムデンシティファイバーボード(以下 「MDF」という。)のPタイプをいう。以下同じ。

口)軸組等に製材又は集成材等でその小径が13.5cm以上のものが用いられていること。

ハ)軸組等に構造用製材規格等に規定する耐久性区分D1の樹種に区分される製材又はこれにより構成される集成材等でその小径が12.0㎝以上のものが用いられていること。

構造用製材規格等:
針葉樹の構造用製材の日本農林規格(平成3年農林水産省告示第143号)、広葉樹製材の日本農林規格(平成8年農林水産省告示第1086号)及び枠組壁工法構造用製材の日本農林規格(昭和49年農林省告示第600号)をいう。以下同じ。

二) イ)から(ハ)までに掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措置が購じられていることが確かめられたものであること。

(ⅱ)構造用製材規格等に規定する保存処理の性能区分のうちK3以上の防腐処理及び防蟻処理が施されていること。

K3相当以上の防腐・防蟻処理:
日本工業規格K1570に規定する木材保存剤又はこれと同等の薬剤を用いたK3以上の薬剤の浸潤度及び吸収量を確保する工場処理その他これと同等の性能を有する処理を含む。

(ⅲ) (i)又は(ⅱ)に掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措置が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

木造住宅は、地面からの高さが1m以内の範囲にある軸組、枠組、木質パネルなどが劣化を受け易い。従って、 木造住宅の劣化対策は、この部分に講じられた措置を中心に評価することとなる。地面から高さ1m以内の外壁の軸組等には、柱、枠材、筋かい、耐力面材等が含まれる。通常、軸組という場合には、土台も含まれることがあるが、土台についてはbで別途規定している。

等級3における外壁の軸組等の基準の構成を簡単に示すと次のとおりとなる。

( i ) 通気構造等 + 次の(イ)から(二)までの措置のいずれか

イ)製材、集成材等又は構造用合板等を使用+薬剤処理(現場処理可)
ロ)製材、集成材等を使用+小径13.5cm以上
ハ)製材、集成材等を使用+耐久性区分D1の樹種+小径12.0cm以上
ニ)その他同等のもの

( ⅱ ) K3以上の薬剤処理(工場処理に限る。)

( iii ) その他同等のもの

これらのうち、その他同等のものとしては、第三者的な機関により、ここで挙げられている材料と同等以上の耐久性があると認められたものが含まれる。

なお、特に( i ).ニ)に当たるものとして、外壁の軸組等に、D1の樹種のうち、b土台の基準のただし書に規定されているヒノキ等の高耐久樹種による製材又は集成材等を用いることが挙げられる。また、含水率の低い木質材料を用いている場合には、初期の劣化対策として期待できるとの指摘があるが、これについては、当面の間は特別評価方法認定により対応することが想定される。

以下、特に解説を要する事項について述べる。

・通気構造等

外壁の構造については、真壁構造(図3-3参照)とそれ以外の構造とに分類して扱っている。真壁構造の場合には、構造材である木材が露出していることから、構造材が雨水で濡れ含水率が高くなったとしても、その後の乾燥が速い。しかし、真壁構造においては、軒の出がない又は短い場合には構造材が濡れる可能性が高いため、90cm以上の軒の出があることをもって効果を認めることとし、そこで、真壁構造の場合には、軒の出の基準と併せて規定することとした。


  
     図3-3 真壁構造

ぬす
    図3-4 通気層を設けた外壁

一方、真壁構造以外の外壁に関しては、外壁仕上げと軸組との間に中空層を設けるなど雨がかり防止上有効な措置が講じられ、かつ、壁体内に通気経路を設けた構造(図3-4参照)であることが基本となる。真壁構造以外の外壁構造は、基本的には大壁構造であるため構造材が壁体内にあり、壁体内に浸入した水分が壁体外に出にくい。この、壁体内に水分が浸入しないよう、外装仕上げ等の防水措置が重要であるとともに、壁体内に浸入した湿気(水蒸気等)を壁体外へ放出するための通 気措置を講ずる必要がある(図3-5参照)。このことにより、大壁構造の壁体は真壁構造とほぼ同等に水分や湿気を防ぐことが可能となる。





   図3-5 壁体外へ湿気を放出する措置

・外壁の下地材

外壁下地材に関しては、製材、集成材等及び構造用合板等の木質材料に限っており、生物劣化を受けにくい無機質系製品には、本基準は適用されない。 また、構造用合板等として用いることができる材料を限定しているが、これは主に接着耐久性の観点から、一定以上の水準を有するものである。構造用合板のほか、構造用パネル、Pタイプのパーティクルボー ド、Pタイプのミディアムデンシティファイバーボー ドが含まれる。

・薬剤処理

防腐・防蟻上有効な薬剤の塗布、加圧注入、浸漬若しくは吹き付け又は防腐・防蟻に有効な薬剤の接着剤への混入などの処理を施すことが求められている。ここでは、現場処理によることを認めているが、もちろん工場処理によるものも認められる。なお、接着剤に薬剤を混入する方法は、合板等に有効であるが、集成材の場合にはラミナが厚いため有効でない。

現場処理(塗布・吹き付け、浸漬)に有効な薬剤としては、日本工業規格K1570(木材防腐剤)に適合するクレオソート油の規格品、(株)日本しろあり対策協会または(株)日本木材保存協会認定の防腐・防蟻薬剤が挙げられる。加圧注入、接着剤混入による保存処理材としては、針葉樹構造用製材等の日本農林規格の規定に基づく保存処理材(K1を除く)、日本工業規格A9108、(財)日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証(AQ)により認証された製材、集成材、合板、LVL等の保存処理製品及び日本工業規格K1570に規定する薬剤を用いて同A9002の方法で製造された製材等が、防腐・防蟻上有効な性能を有している。

塗布、吹き付け、浸漬の場合には、できるだけ処理むらを生じないように処理を行い、木材等の木口、仕口、継手の接合部、亀裂部分、コンクリー ト及び石と接する部分等は入念に処理することが望ましい。

また、木材の耐久性はどの樹種にあっても、心材であることにより十分に発揮されるものであり、辺材が含まれる場合は、防腐・防蟻措置を講ずることが望ましい。

なお、シロアリ防除用に使用される有機リン系薬剤であるクロルピリホスについては、平成14年7月に建築基準法が改正され、クロルピリホスを添加した建築材料の使用が原則禁止となり、平成15年7月1日より施行されている。

さらに、公共住宅事業者等連絡協議会の公共住宅建設工事共通仕様書においては、薬剤による防蟻措置について、非有機リン系薬剤の使用に限ることを特記するよう改訂している。

防蟻剤の種別の詳細に関しては、基準に基づく評価の対象ではないが、木造住宅における薬剤による防蟻措置を行う場合には、こうした状況を十分に勘案の上実施されることが望ましい。

なお、評価方法基準には、日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)などを引用している部分があるが、引用元の規格で誤差を許容している場合は、本基準においても当該誤差は許容されると考えて差し支えない。

告示3-1(3)イ①
 b.土台

土台が次の( i )から( iii )までのいずれかに適合し、かつ、土台に接する外壁の下端に水切りが設けられていること。

( i ) 土台にK3相当以上の防腐・防蟻処理(北海道及び青森県の区域内に存する住宅にあっては、構造用製材規格等に規定する保存処理の性能区分のうちK2以上の防腐処理(日本工業規格K1570に規定する木材保存剤又はこれと同等の薬剤を用いたK2以上の薬剤の浸潤度及び吸収量を確保する工場処理その他これと同等の性能を有する処理を含む。))が施されていること。

(ⅱ) 構造用製材規格等に規定する耐久性区分D1の樹種のうち、ヒノキ、ヒバ、ベイヒ、ベイスギ、ケヤキ、クリ、ベイヒバ、タイワンヒノキ、ウェスタンレッドシダーその他これらと同等の耐久性を有するものに区分される製材又はこれらにより構成される集成材等が用いられていること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の劣化の軽減に有効な措個が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

土台は、他の構成部材と比較して柱の柱脚部と同様に劣化による被害が多い部分であり、被害を誘発する原因としては、雨水の浸入・はね返り、土中からの湿気、シロアリの侵入等がある(図3-6参照)。このため、土台については手厚い劣化対策が必要となるが、この基準では、c 以降の基準で、基礎高さ400mm以上、床下の防蟻・防湿措置を講じることを求めていることを前提として、外壁の下端に水切りを設けた上で、保存処理区分がK3相当以上の防腐・防蟻処理(北海道、青森県 にあってはK2相当以上の防腐処理)を施すか、又は、ヒノキ等の高耐久樹種を用いるかの対策を講じることを求めている(図3-7)。これにより、被害を誘発する原因を構法的に軽減するとともに、材自体の耐久性を高めている。なお、ここに定めた以上の劣化対策として、保存処理の性能区分がK4相当の防腐・防蟻処理を施すこと、また、犬走り等を設けて雨水のはね返りを軽減することなどが有効であり、腐朽や蟻害の激しい条件においては、必要に応じてこれらの措置を講じることが望ましい。


   図3-6 土台の劣化を誘発する要因


       図3-7 土台の劣化対策

土台の薬剤処理においては、構造用製材等の日本製林規格に規定する保存処理の性能区分のうちK3以上の防腐・防蟻処理のほか、一定の薬剤の浸潤度・吸収量を確保できる工場における加圧注入処理、あるいはこれと同等以上の処理方法とすることを求めている。なお、これには日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証(AQ)の保存処理2種以上の処理などがある。このような防腐・防蟻処理を行った場合は、使用される木材が集成材等であっても構わない。

ヒノキ等の高耐久樹種とは、日本農林規格に規定する耐久性区分D1に区分される樹種の中で、ヒノキ、ヒバ、ベィヒ、ベイスギ、ケヤキ、クリ、ベィヒバ、タイワンヒノキ、ウェスタンレッドシーダーその他これと同等の耐久性を有するものである。その他同等の耐久性を有するものとしては、木材工業ハンドブックに記載されている表中、 次に示す耐久性の区分がl又はII のものが挙げられ る。これらには住宅 の構造材として使われる見込みの少ない広葉樹材が多く、実際には以下のものの使用が想定される。

サワラ、ネズコ、イチイ、カヤ、コウヤマキ、インセンスシーダー、センペルセコイヤ

なお、これらの樹種により構成されるものである場合は、使用される木材が集成材等であっても構わない。

また、防腐 ・ 防蟻処理や高耐久樹種の使用の他に、これらの措置と同等の有効性を持つことが第三者的機関等により確かめられたものについても同様に扱われる。

木材の耐久性はどの樹種にあっても、心材であることにより十分に発揮されるものであり、辺材が含まれる場合は、防腐 ・ 防蟻措置を講ずることが望ましい。

告示3-1(3)イ①
 
 c 浴至及び脱衣室

浴室及び脱衣室の壁の軸組等(室内側に露出した部分を含む。)及び床組 (1階の浴室廻りで布基礎の上にコンクリートブロックを積み上げて腰壁とした部分又はコンクリート造の腰高布基礎とした部分を除き、浴室又は脱衣室が地上2階以上の階にある場合にあっては下地材を含む。)並びに浴室の天井が、次の( i )から(iii)までのいずれか又は aの( i )から(iii)までのいずれかに適合していること。

( i ) 防水上有効な仕上げが施されているものであること。

(ⅱ) 浴室にあっては、 日本工業規格A4416に規定する浴室ユニットとするものであること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の防水上有効な措置が講じられていることが確かめられたものであること。

【解説】

台所、洗面所、浴室など使用水に関連する水廻りにおいて劣化割合が多いことが従来から指摘されているが、ここでは、台所、洗面所等については、水のはね返り防止や防水への配慮等がなされたシステムキッチンや洗面化粧台等を使用することが一般化してきていることを踏まえ、浴室及び脱衣室など、湿気や水濡れが著しい場所を特に取り上げて、床組等の防水措置又は防腐措置を求めている。具体的な対策としては、防水上有効な仕上げを施すこと、浴室にユニットバスを設置するなど防水上有効な仕上げを施すか、あるいは、外壁の軸組等に対して求められている防腐措置を講じることが挙げられる。

防水上有効な仕上げとは、シージング石こうボード貼り、ビニルクロス貼り等が挙げられるほか、耐水合板を使用する場合も同等の防水上の有効性があるものと考えられる。

なお、1階の浴室廻りについては、腰高布基礎(コンクリート造、 コンクリートブロック造 )などを採用した部分は、措置を講じる必要はない。

告示3-1(3)イ①
d 地盤

基礎の内周部及びつか石の周囲の地盤は、次の( i ) がら(iii) までのいずれか(基礎断熱工法を用いる場合にあっては( i ) )に適合する有効な防蟻措置が講じられていること。ただし、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福品県、新潟県、冨山県、石川県又は福井県の区域内に存する住宅にあっては、この限りでない。

( i )地盤を鉄筋コンクリート造のべた基礎で又は布基礎と鉄筋により一体となって基礎の内周部の地盤上に一様に打設されたコンクリートで覆ったものであること。

(ⅱ)有効な土壌処理が施されたものであること。

(iii) ( i ) 又は(ⅱ) に掲げるものと同等の防蟻性能があると確かめられたものであること。

【解説】

シロアリは、地中から基礎、床束その他の地面と建物をつなぐものを伝わって建物内に侵入する。これを防ぐために、べた基礎等で床下の地盤面を覆うこと、又は、防蟻薬剤により土壌処理を行うことが求められる。この場合の有効な防蟻薬剤には、(社) 日本しろあり対策協会又は(社) 日本木材保存協会認定の土壌処理用薬剤がある。

べた基礎と同等の防蟻効果を有するものとして、布基礎と防湿コンクリートを鉄筋で一体としたものがある。

鉄筋で一体化することを求めるのは、基礎の立ち上がり部分と防湿コンクリートとの間に隙問が生じ、そこからシロアリが侵人することを防止するためである。

なお、土壌処理を行う場合には、敷地の状況、土質などを判断して薬剤の種別や処理方法を決定し、水質汚染等につながらないように慎重に行う必要がある。

また、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、新潟県、富山県、石川県及び福井県の区域内では、比較的寒冷地であるため、ヤマトシロアリによる被害の進行が遅いので、この基準を適用することとしていないが、北海道の一部を除きヤマトシロアリは生息しているので、必要に応じて防蟻措置を講ずることが望ましい。

告示3-1(3)イ①
 e 基礎

地面から基礎上端までの高さが400mm以上であること。

【解説】
基礎高さは、土台等の木部の劣化を防止するために必要であり、地盤面から基礎上端までの高さは、
①雨のはね返りを防止するのに必要な高さ
②換気口の下端の地盤面からの高さ
③点検のしやすさ
などを考慮する必要がある。これらの諸条件を考慮して、400mm以上としている。

告示3-1(3)イ①
 f 床下

床下が次に掲げる基準に適合していること。

( i )厚さ60mm以上のコンクリート、厚さ0.1mm以上の防湿フィルムその他同等の防湿性能があると確かめられた材料で覆われていること。

(ⅱ)外壁の床下部分には、壁の長さ4m以下ごとに布効面積300㎝2以上の換気口が設けられ、壁の全周にわたって壁の長さ1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口が設けられ、又は同等の換気性能があると確かめられた措置が講じられていること。ただし、基礎断熱工法を用いた場合で、床下が厚さ100mm以上のコンクリート、厚さ0.1mm以上の防湿フィルム(重ね幅を300mm以上とし、厚さ50mm以上のコンクリート又は乾燥した砂で押さえたものに限る。)その他同等の防湿性能があると確かめられた材料で覆われ、かつ、基礎に用いられる断熱材の熱抵抗が、次の表の地域区分(5-1(2)イ①に規定する地域区分をいう。)に応じ、それぞれに掲げる数値以上であるときは、この限りでない。

[解説]

床下は、地面からの水蒸気等により湿気がたまりやすい場所である。このため基準では、木材腐朽菌やヤマトシロアリなどが乾媒に弱いことを考慮して、床下の防湿措置及び換気措置を講じることを求めている。

床下の防湿措置としては、厚さ60mm以上の防湿コンクリート又は厚さ0.1mm以上の防湿フィルム等を用いることがある(図3-8、3-9参照)。透湿抵抗のある防湿フィルムとしては、JISA6930住宅用プラスチック系防湿フィルム、JIS Z1702 包装用ポリエチレンフィルム、JIS K6781 農業用ポリエチレンフィルムなどが挙げられる。この場合、基準に基づく評価の対象ではないが、一般的に次の点に留意することが有効である。

① 地面に散乱した木片などを除去し、地面を十分締め固め、平滑にする。

②配管工事、木工事の際に敷き詰めた砂を乱さないようにするとともに、防湿フィルムを破らないようにする。また、工事後、撒いた砂に木くず等が混入しないようにする。

③雨水等により地面や敷き詰めた砂が濡れた場合には、十分に乾燥させる。

④床組最下面と敷き詰めた砂との間隔は、300mm以上空間を保つようにする。

⑤防湿コンクリートを使用する場合には、施工直後はコンクリートに含まれた水分が蒸発するため床下空間の湿度が高くなるので、 コンクリートが十分乾燥してから床仕上げを行う。


    図3-8 床下地盤面の防湿措置


    図3-9 防湿コンクリート

また、換気措置としては、 4m以下毎に有効面積300㎝2以上の換気口が設けられていること、 又は、壁の全周にわたって壁の長さ1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口(ねこ土台) が設けられていること等がある。 この場合、 基準に基づく評価の対象ではないが、 一般的に次の点に留意することが有効である。

①柱の配置等にも注意した上で4mの等間隔に、有効な床下換気が行えるようにバランス良く換気口を配懺する。

②床下のコーナ一部は換気不足になりがちなため、近くに換気口を設ける(図3-10参照)。

③床下が常に乾燥している状態を保つために、換気口はできるだけ高い位置に設ける(図3-11参照)。

④外周部の換気口から雨水が浸入しないように、換気口下端は外下がりに勾配をつける(図3-12参照)。

⑤間仕切り壁の下部が布基礎の場合には、通風・点検のために換気口を設ける(図3-13参照)。

⑥ねこ土台によって1m当たり有効面積 75㎝2以上の換気口を設け床下換気を確保する場合には、構造上支障がないように間隔、位置等を十分検討する。


 図3-10 床下換気口の配置


  図3-11 床下換気口の位置


    図3-12 床下換気口断面


  図3-13 間仕切り壁下部の換気口

なお、 基礎断熱工事(床に断熱材を施工せず、布基礎の内外に地面に垂直に断熱材を施工し、 床下換気口を設けない工法。 図3-14参照) を採用する場合には、 換気措置を求めないことから、 地域区分に応じて所定の断熱材を施工すること、床下の水蒸気の滞留を防止するために入念な防湿措置を講じることを求めている。 この場合、 基準に碁づく評価の対象ではないが、 次の点に留意することが有効である。

①埋設する断熱材はシロアリの被害を受けやすいため (外側の断熱材が蟻道となるおそれがある。)、断熱材の施工位置を内側とするなどの対策が必要である。 また、 断熱材の継目に隙間があると、 そこが熱的な弱点となるため、 断熱材同士の隙間には現場発泡のウレタン材などを充填する。

②床下の空気は、室内の空気と交換されるおそれがあるため、べた基礎まで地盤を覆う等により床下空気中に防腐・防蟻薬剤が飛散しないような工夫が必要である。また、居室が高湿度になっている場合には、 床下空間も同様となるため、 居住空間の温湿度管理を行う必要がある。

③床下点検口等を設懺して、 床下の状態を点検しやすくする。

④給排水管からの漏水や雨仕舞い不良によって水分が床下に浸入した場合には、速やかに対応策を講ずる。


 
      図3-14 基礎断熱工法

告示3-1(3)イ①
g 小屋裏

小屋裏(屋根断熱工法を用いていることその他の措置が講じられていることにより、室内と同等の温熱環境にあると認められる小屋裏を除く。)を有する場合にあっては、次の( i )から(ⅳ)までのいずれかの換気方式であること。

( i )小屋裏の壁のうち屋外に面するものに換気上有効な位置に2以上の換気口が設けられ、かつ、換気口の有効面積の天井面積に対する割合が300分の1以上であること。

(ⅱ)軒裏に換気上有効な位置に2以上の換気口が設けられ、かつ、換気口の有効面積の天井面積に対する割合が250分の1以上であること。

(ⅲ)軒裏に給気口が設けられ、小屋裏の壁で屋外に面するものに排気口が給気口と垂直距離で90㎝以上離して設けられ、かつ、給気口及び排気口の有効面積の天井面積に対する割合がそれぞれ900分の1以上であること。

(ⅳ)軒裏に給気口が設けられ、小屋裏の頂部に排気塔その他の器具を用いて排気口が設けられ、かつ、給気口の有効面積の天井面積に対する割合が900分の1以上であり、排気口の有効面積の天井面積に対する割合が1600分の1以上であること。

【解説】

木造住宅においては、地面から1m以内にある構造部材が劣化を受ける場合が多いが、この他に劣化が発生しやすい場所として、水廻り及び小屋組があり、ここでは、小屋組部材の劣化を軽減する措置を定めている。

小屋組での劣化は、雨淵り及び結露水が主な原因として考えられる。このため、床下と同様に小屋裏空間に逃げた湿気を小屋裏換気口を通して屋外に放出することが必要である(図3-15参照)。換気口は、湿気を屋外に排出する以外に次のような利点を有する。

①小屋裏内の温度が外気温に近づくので、屋根下地板表面での結鋸を防止する。
②瓦下での結露を防止する。


   図3-15 小屋裏換気口の種類

告示3-1(3)イ①
h 構造部材等

令第37条、第41条、第49条及び第80条の2(国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分で、構造躯体等の劣化軽減に関係するものに限る。)の規定に適合していること。

【解説】

建築基準法施行令第36条に規定されている耐久性等関係規定のうち、劣化の軽減に関する規定への適合を求めているものである。