住宅のかたち(鉄筋コンクリート造02)

いわずと知れた住吉の長屋
建築家 安藤 忠雄氏の初期の作品です。
(1976 大阪)

雨の日は傘をささなければ、トイレにも行けない。とか設計者の横暴だとか、かつてはいろいろ揶揄される事が多かったようですが、この住宅を実際に体験すると、空間の豊かさに感嘆させられます。

中庭は、外部から完全にプライバシーが保たれた空間でありながら、空という無限遠まで解放され、自然光が十分に注ぎ込む。
視覚的効果が計算され尽くされ、間口は躯体芯で3.3mと2間にも満たないが、圧迫感は感じさせられない。

玄関を入ると、あたかもポーチに入ったようですが、実は外部空間で屋根がなく、見上げると空へトンネル状になってます。閉塞感のあるポーチを曲がって戸内に入ると、部屋(リビング)の向こうに、光が差し込む中庭が見えます。
その中庭の向こうにはダイニング。

敷地の長手方向は、リビングエリア、中庭エリア、ダイニング水廻りエリアで4.7mずつ3分割され、合計で14.1mです。
長手方向を見通せれることによって、かつ、空へのアプローチもあり、開放的であり、自然と一体になれるような感覚を得ることができます。

住宅のかたち(鉄筋コンクリート造01)

沖縄のあるプロジェクトで沖縄に滞在中、鉄筋コンクリート造の住宅を一定期間、賃借していた時期がありました。

台風の強風に頻繁にさらされるという事と、大量に発生する白蟻の被害に対する事から、現在の沖縄では、本州とは違って鉄筋コンクリート造の住宅が多くの割合を占めております。
(本州)木造:RC造 = 約 90%:約10%
であるのに対し、
(沖縄)約10%:約90%
と逆の比率になっています。


1階は車庫になったピロティ形式で、住宅部分は2階~3階になっています。吹抜けがあり、螺旋階段でつながるメゾネット、部屋は区分はあるものの内部の建具は水回り以外にはなく、住空間はすべてひとつの空間内にあります。
仕上げは、内外共にRC打放しなので、費用もかなり抑えられています。
鉄筋コンクリート造といえども、それほど費用はかかってなさそうです。坪単価、おおよそ40〜50万円ぐらいか?

図書館へ行って調べてみると、おおよそ同じような住宅は、坪単価50万円程度でつくられています。詳しく内容は記載されていませんが、やはり断熱材は施されていいないのでしょう。



プラン的にもみても、コンクリート躯体で囲まれたひとつの空間内に、家族がつつまれて、一体となる。沖縄のおだやかな気質に通じるものもあると考えられます。

本州では、断熱材は必須ですが、それを考慮してもコストは抑えることができると思います。但し、断熱性能を高めるという事は、アルミサッシ等の開口部も断熱性能の高いものとする必要があり、大きな開口窓を採用している場合は、コストを抑える効果は少なくなってきます。

ディテールにおいては、
サッシ際など、暴風雨の時に雨水が浸入してしまうなど、少し雑な部分がありましたが、大いに住み心地のよいもので、本州内部でも提案したいものを感じました。

断熱の問題、少しばかりのプライバシーやセキュリティー(沖縄ではこの感覚が低い場合が多々見られますが、都心部では大切なポイントです。)の問題を解消すれば、本州の都心近郊部でも多いに好まれる住宅であると思いました。


上部の小開口は琉球ガラスのFIX

コストを下げることによっても、鉄筋コンクリート住宅の採用も選択の視野に入ります。